なるほどですね。

作家とプロデューサーをしているみずけんのコラム

サンジのいたシェアハウス

   

うちのシェアハウス「グラッシェ」にはサンジを名乗る男がいた。

あの有名漫画「ワンピース」のコック、サンジである。

 

彼の名はふっきー。

共にグラッシェに住んでいた仲間である。

 

 

 

ある日のこと。彼は、全くもって自炊をしない僕らに向けてこう宣言した。

 

「俺、グラッシェのサンジになります。」

詳しくは覚えていないが、僕はポカンと口を開けていたと思う。他の住人も同様だった。

 

「何言っているんだ。」と首を傾げ、目の前の、何かにつけて流されやすいお人よしの後輩がまたしてもおかしな道に踏み込んでしまったのだと心配した。

「お、おう」という僕らの反応を気にすることなく、その後、彼はコツコツと自炊をするようになる。

 

 

自分で自分を盛り上げられるのが彼の凄いところだ。

やがて「ふっきー食堂」を開設。

 

彼の手料理を食べたければその場でお金を払うシステムが完成した。

 

 

「クソ美味いと思います。」

料理を出す時、彼は口癖のようにこう言った。その眉毛は心なしかクルクルしていた。

 

 

「うん、美味しい。」
僕らが素直に感想を述べると彼は喜び、

 

「クソありがとうございます。」
とはにかんだ。

 

 

その後も彼の中ではサンジ化が進み、

 

 

「じゃ、クソ後片付けします。」

「この、クソフライパンが、」

「クソみずけんさん。」

と、最後はただの悪口を連発するようになる。

 

 

 

そんな彼は今、千葉の実家で農業に勤しんでいる。

 

 

 

早起きが苦手なことを僕らは重々知っているので、しっかりやれているのか少し不安である。

でもきっと、彼は広大な大地で、「クソ美味い野菜」を作っているはずだ。  

 

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